農業研修日記12月1日(花芽分化)



花芽分化

花をつけるには、生長点(茎頂)で花芽ができなければなりません。今まで、生長点で葉のもとになるもの(葉原基)を作っていた部位が、花芽に変化するのです。花芽が分化したかどうか、肉眼で観察することはできません。花芽が分化する条件には、(1)温度条件(高温と低温)、(2)日長条件(長日と短日)、(3)温度や日長とは無関係に、植物体が一定の大きさになったら花芽を分化し、トウ立ち、開花するものに大別されます。

(1)温度条件(トンネルの隠れた能力)
低温で抽苔するダイコン
ダイコンは低温の影響を受けて花芽が分化し、その後の温度上昇によって抽苔が起こるとされています。低温に感応するのは、水分を吸収して発芽態勢をとったタネで、この段階で0~5℃の低温に一定期間あうと、そのタネが発芽、生長する時は低温にあわなくても花芽が分化します。この性質を種子低温感応性と呼びます。

ただし、ダイコンは前記の段階で低温にあわなくても、生育が進んでいく途中で低温に遭遇すれば花芽を分化し、抽苔、開花する性質を持っています。これを緑色植物低温感応性と呼びます。つまり、ダイコンはいつ低温にあっても、それを感じて花芽を分化する植物だということです。

●低温効果の打ち消し作用
ダイコンが低温の影響を受けて花芽分化することは、すでに述べました。早春まきでは、この低温域が連夜繰り返しダイコンに作用することになるのですが、トンネルをかけると低温域が上るだけでなく、日中の高温域も上昇し、時には高温障害が出そうな状態になる場合もあります。この、ある一定以上の高温が、夜の低温に関連してくるのです。

(夜)1で低温効果を受けて翌日に(昼)1の温度があまり上昇しなかった場合は、(夜)1の低温はそのままダイコンの花芽分化に作用します。ところが、(夜)2の低温が(夜)1と同程度であっても、翌日の(昼)2の温度が高くなって25℃を超えたとすると、25℃を超えた分の高温は、前夜の(夜)2の低温効果を打ち消す働きをします。この時、(夜)2の低温効果を全部打ち消すのではなく、(昼)2の高温の働きを差し引いた分が、低温効果としてダイコンに残ると考えられます。

同様に、(夜)3の低温に比べると(昼)3の高温条件は25℃以上の部分が多く、それが前夜(夜)3の低温効果を消去しても余剰が出るため、(夜)3の低温効果はなかったことになります。つまり、花芽分化に作用する低温の働きは、翌日(昼)の高温いかんで変化することになります。

早春まきのダイコンでは、トンネルとマルチを併用することにより、トンネル内の夜温の低下が抑えられるうえ、翌日昼間のトンネル内温度が30℃を超えることも珍しくありません。25℃以上の温度は前夜の低温効果を打ち消すので、花芽分化は起こらず、さらにトンネル内の気温および地温の上昇と、マルチングによる土壌水分の安定も加わって、「不時抽苔」の発生を抑え、ダイコンの生長を促すことになります。もちろん、作付けするダイコンは、低温感応性の鈍い品種にすることも忘れてはなりません

 

(2)日長条件
ホウレンソウは代表的な長日植物の野菜とされ、抽苔は日長の影響を受けます。品種でも、東洋系は西洋系より日長に敏感に反応して抽苔するとされますが、花芽分化と抽苔を分けて観察すると意外な面がうかがえます。それは、花芽分化に関しては、東洋系品種も西洋系品種も同じ反応を示すということです。

つまり、日長や温度に関係なく、ある程度生長したら花芽の分化が起こります。実験によって多少異なりますが、その時期は本葉が4~5枚展開したころと見てよいでしょう。分化した花芽が生長して抽苔するのに、東洋系品種では短い日長に敏感に反応して既に分化した花芽の生長がおこり抽苔します。西洋系品種の場合は東洋系品種より長い日長と高めの温度にならないと感応して抽苔してこないわけです。

(3)温度・日長に無関係な場合
トマトのように、ある程度植物体が大きくなったら花芽が分化し、出蕾、開花が茎葉の生長と並行して進むものがあります。この時、植物体の栄養条件によって、花芽分化に早晩が生ずることがあります。特に、チッソ飢餓は花芽分化を促すことが分かっているので、花芽が分化した後は、正常な肥培管理に戻す時期や施肥量などについて、いろいろと考慮することが必要です。


出典:野菜のメカニズム~花芽分化~ | [野菜]山田式家庭菜園教室 | 調べる | タキイ種苗株式会社 (takii.co.jp)

 

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