農業研修日記10月15日(セミナー)

今日は14:00~16:00まで佐藤農園‐佐藤和夫先生の農業セミナーがありました。

大会議室で佐藤先生のセミナー開催佐藤先生紹介資料‐JA広島市

日本の「食料自給率」はなぜ低いのか?

国内で消費された食料のうち、国産の占める割合のことを「食料自給率」という。
農林水産省の発表によれば、2018年度の日本の食料自給率は37%(カロリーベースによる試算)と過去最低を記録した。これをおおまかに解釈すれば、日本で食べられているもののうち、37%が国内で生産されたもので、残りの63%は海外からの輸入に頼っているということになる。
日本の食料自給率は主要先進国のなかでも最低の水準であることは知られている。そのため、現状に危機感を覚える向きも少なくない。海外依存度が高ければ高いほど、輸入元の国が不作になってしまったり、戦争などの情勢によって輸入ができなくなったりすると、途端に食料不足になってしまうからだ。

日本の食料自給率が他国に比べて著しく低い理由

戦後直後の日本の食料自給率は88%だった(1946年度)。ところが、1965年度に73%の水準を記録して以降、緩やかに下がり始め、2000年度以降は40%前後でほぼ横ばいに推移している。

一方、海外に目を転じてみると、カナダは264%、オーストラリア224%、アメリカ130%、フランス127%(2013年度、農水省試算)などとなっており、日本との差は歴然としている。

これを受け、2010年に当時の民主党政権が、2020年までに食料自給率を50%に回復させるという目標を立てたものの、2015年には目標値自体も45%に引き下げられている。

そもそも食料自給率はどのように計算されるものなのか。

日本で採用されているのが、「カロリーベース」の総合食料自給率である。これは、それぞれの品目の重さを、人が生きていくのに必要な熱量(カロリー)を基準にして割り出すもので、

国民一人一日当たり国産熱量(2017年度は924kcal)÷国民一人一日当たり供給熱量(同2444kcal)✕100

という計算式になる。

しかし近年、食料自給率の算出に、このカロリーベースを採用することについて問題が指摘されることも少なくない。

例えば、先述のように、輸入された餌で育った牛や豚や鶏、卵などは、国内で育てられたものだとしても算入しないのが、カロリーベースにおける食料自給率の特徴である。

また、食べられずに廃棄された食料も分母に含まれるため、年間2000万トンもの食品廃棄のある日本では、必然的に自給率が低くなるという側面もある。そのため、より多くの品目の国内生産に力を注ぐより、食べ残しや消費期限切れで捨てられる食料、いわゆる食品ロスを減らした方が自給率自体のアップにつながるとの指摘もある。

世界でも珍しい算出方法「カロリーベース」

カロリーベースによる自給率の算出は、国際標準ではないという点も挙げられる。日本のほか、韓国や台湾など、一部の国で採用されているに過ぎない。
日本の食料自給率がここまで下がってしまった要因として考えられているのが、急激な食生活の変化だ。

かつて、日本人の主食といえばコメであったが、戦後の復興に伴い、国が次第に豊かになっていくと食生活が欧米風に変化していった。コメの消費が減る一方、肉やパンの需要が急激に増えていったのである。

農水省の発表している品目別自給率によれば、現在、コメの自給率は主食用において100%だが、牛肉に関しては36%。輸入に頼っている飼料で育ったものを除外すると、牛肉の自給率は10%にまで下がる。豚肉は49%、鶏肉は64%となっているが、同様に、外国産飼料で育てられたものを省くとそれぞれ6%、8%と著しく低い。

ほかにも、小麦14%、大麦9%、大豆7%、果実38%、食用の魚介類55%、砂糖類34%、油脂類13%といった数字が、国内におけるそれぞれの品目の自給率である(いずれも2018年現在、農水省発表。出展・日本の食料自給率:農林水産省

世界標準「生産額ベース」では見劣りしない自給率

主要先進国をはじめ、国際的に主流となっている算出方法は、「生産額ベース」の食料自給率だ。

これは、それぞれの品目の重さを、生産額を基準にして割り出すもので、計算式は、

国内の食料生産額÷国内の消費仕向量✕100

となる。これに基づけば、日本の食料自給率は66%(2018年度。国内生産額10.6兆円÷国内消費仕向量16.2兆円)。

先述した各国の自給率を生産額ベースに直してみると、カナダは121%、オーストラリア128%、アメリカ92%、フランス83%。この後に続くのは、イタリア80%、ドイツとスイスが70%。イギリスにおいては日本よりも低い58%となっている(いずれも農水省試算、2009年)。決して高いとはいえない数字ながら、主要先進国で最低水準となっていたカロリーベースと違い、生産額ベースで見てみると日本の自給率が他国と比べてそれほど見劣りする数字ではないことがわかる。

では、カロリーベースと生産額ベースとで、算出した食料自給率がこれほど大きく異なるのはなぜなのか。

例えば野菜で考えてみよう。国産の野菜の割合は77%(2018年度)。だが、野菜のカロリーは食料全体のうち数%程度に過ぎないため、国産が多くてもカロリーベースの自給率の底上げにはさほど影響しない。一方で、生産額ベースで見ると野菜の割合は全体の20%を超えている。

なお、カロリーベースにせよ生産額ベースにせよ、100%を超える自給率の国が、すべての品目を国産でまかなえているとは限らないことにも注意したい。その国の気候や土壌によって生産できるもの、できないものはさまざまあり、自給率としてみると100%であっても、一部の品目についてはほとんど輸入に頼る、といったケースは珍しくないからだ。

食料自給率から見える日本の農業の課題

カロリーベースにおける国内の食料自給率が37%という数字は、非常に強いインパクトで国民に受け止められている。冒頭で述べたように、現在、世界中で見られる異常気象や天候不順、あるいは国際情勢によって輸入が制限されれば、すぐさま食料不足に陥るリスクが容易に想定されるからだ。

また、爆発的に増え続ける世界人口を前に、地球規模での食料不足を懸念する声もある。そうした事態に備えるためにも、早急に食料自給率を向上させなければならないという考えもある。

とはいえ、2020年までにカロリーベースで食料自給率50%を達成するという目標が45%に引き下げられたことからもわかるように、その声が実態を伴って自給率向上につながっているとはなかなか言いがたい。

食料自給率が好転しない理由としては、高齢化による農業生産者の減少、またそれに伴う耕作放棄地の増加といった、農業そのものの衰退が挙げられている。

また、2018年12月に発効したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)や、EUとの経済連携協定(EPA)により、参加国間での関税が撤廃され、海外産の農産物などが輸入しやすくなることが、食料自給率のさらなる低下につながると懸念する人もいる(※2018年度の割合にはこれらの影響は含まれていない)。

日本からの農産物輸出による経済活性化というメリットや、コメなどの主要農産物は保護されるといった日本の事情も汲み取ってくれてはいるものの、食料自給率という観点からすれば心配になるのも当然のことだ。

そもそも近年では、「カロリーベースではなく生産額ベースの自給率を重視すべきである」「食料輸入が途絶えることは想定しづらく、自給率指標そのものが無意味」「自給率よりも農家の所得向上のための政策立案が最優先」など、自給率自体についてもさまざまな考え方が見られる。

食料自給率の改善に向けた取り組み事例

カロリーベース、生産額ベースといったデータの基準をどこに定めるか、という議論はあるものの、いま我々が直面しているのは、国レベルでいかに自給自足ができる体制を整えるか、という点は疑いがない。TPPの発効などで日本と世界の垣根がなくなり、安価な物流が可能になるというメリットの裏側には、緊急時に自らの力でどれだけ生活を維持できるかという食料事情が付いてまわる。

そのため、食料自給率の改善に向けた官民上げての対応策が進められている。

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